第66回全国夜間中学研究大会(橿原市にて)

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                         吉岡泰次郎

山本直子

12月1日に橿原市の奈良県社会福祉総合センターで、全国夜間中学校研究大会  が開催された。私は最初の1日と2日の午前中のプログラムに参加した。この研究大会は、参加者が、全国の夜間中学の取り組み発表や意見交流を通じて「教育を受ける権利の保障」について理解をさらに深め、夜間中学の取り組みが、更に、充実したものになることがねらいです。開会式では、来賓の挨拶があり、亀田橿原市長は橿原市全市を挙げて、この大会を準備してきたことを紹介された。大会事務局長の天理市立北中学校の金考誠さんから、この大会の主題が提起された。

■夜間中学の原点と歴史をふりかえると同時に夜間中学をとりまく現状から、教育の在り方を問い返そう。

■基本的人権としての学ぶ権利を保障しよう。

■これからの夜間中学のありようを展望しよう。

具体的には、現在、夜間中学で学ぶ生徒層は変化しています。在日韓国・朝鮮人生徒や中国引揚生徒は大幅に減少し、生活・仕事で必要な日本語の習得を求める新渡日外国人市民が大幅に増加しています。形式卒業者の学び直しも増加しています。学齢不登校経験者の受け入れ、発達障害など特別な配慮を必要とする生徒の入学も増えています。生徒層が変化していく中で、夜間中学教育を充実させる具体的取り組みは何なのか、魅力あるある学校づくりや授業づくりにどう取り組むのか、人権に直結している識字・日本語学習をどう取り組むのか、教員の資質向上に向けた研修のあり方、教員の高齢化が進む中で夜間中学教育の若い担い手をどう育成していくのか、生徒の背景に向き合い人権課題・教育課題としてどう取り組んでいくのか、また、学ぶ機会を求める人々のニーズは確かにあるのに、その人々に夜間中学で学べるという情報が届いていない状況がある。主体者である生徒さんに寄り添うことは当然ですが、さらに夜間中学へつながっていない人たちの声なき声にも想いをはせ、基本的人権としての学ぶ権利をいかにして保障するのか、等、様々な課題について論議を深めていきたい。ということです。

そして、プログラムは分科会に入った。私は日本語入門と人権教育・平和教育を選んだ。

人権教育・平和教育の分科会では、人権教育の素晴らしい事例を学んだ。平和教育では、平和学習の教材として「清ら島沖縄」「さとうきび畑」「島唄」「広島平和学習・原爆とオバマ大統領広島スピーチ」の紹介があった。

私は、これでは不十分と思い、会社員時代に、約20年間、中国や東南アジアや中南米の国々に派遣されて、出前金型技術指導をした時の経験を話した。フィリピンで復活祭を祝うために神父さんから招待されて訪問したインファンタでは、当時の学校の先生だったおばあさんが、「みよ、きょくじつの、・・・」と、日本語の軍歌を歌ってくれて、生徒に教えたことを話してくれた。大切に持っておられた貨幣代わりの当時の軍票を、今でも使えるかどうかわからないけど役立ててくださいと渡された。涙が出て止まらなかった。インファンタは、日本軍による住民の虐殺があったところですと、マニラで西本神父から聞いた。戦争前は、東洋の真珠とよばれ豊かだったフィリピンが、日本の起こした戦争で、国中が荒れて貧しくなった。そのことを忘れてはいけないとも。私は現地の会社の人に案内してもらい、無数の墓標の立ち並ぶマニラの国立墓地に行ってお祈りをした。

タイのカンチャナブリは、映画「戦場にかける橋」の舞台になったところです。この橋の横に、犠牲で亡くなられた英軍の捕虜やタイの方々のお墓があって、タイの友達に案内してもらって、そこでもお墓参りをした。色々な国での技術指導の授業中にも、戦争の事が、話題になることが多くあった。感謝されたことはなかった。都度、私は、「日本人を代表して、心からお詫びします。」と謝った。「その償いとして、心をこめて、皆さんに私の持っている技術を伝えます。真心を込めて指導します。」と。今の、日本の学校教育では、日本の起こした戦争について、触れていないようで。平和学習の教材は、被害国としての教材ばかりだったので、分科会では、ひとこと意見を言った。後で、発表された先生から、感謝された。(吉岡泰次郎)

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大会2日目のメインは、全国の夜間中学生4名による体験発表と、大会が奈良大会となったことによる「奈良からの発信」というステージ発表でした。生徒さんによる体験発表は、公立3名と自主1名で、自主からは吉野自主夜間中学の生徒さん大村一二三の発表でした。「奈良からの発信」では、2021年に奈良県教育委員会が「奈良県夜間において授業を行う中学校に関する基本方針」を策定した経緯について、奈良県教育委員会の丹下課長補佐より説明がありました。その説明の中では、長年にわたり奈良県夜間中学連絡協議会(以下、奈夜中協と呼称します。)から夜間中学の基本方針の策定要求がなされていたことや、全国的に先駆けて制定したことなどが披露されました。次に露の新治が奈良県の夜間中学運動のはじまりと題して様々なエピソードを披露していただきました。その後、やっと夜間中学にたどり着いた生徒さんの独話が語られ、「学校へ行きたかった。文字を学ぶことは自分の命と人権を取り戻すこと。」と話されました。奈良県の夜間中学の増設運動については、米田哲夫さんが今につながる課題も含めてお話されました。それに続き、奈夜中協の代表として山本直子が自身が所属する西和自主夜間中学についての紹介を交えながら、奈夜中協の運動と今後の課題について発表しました。1奈良県にある3つの公立夜間中学は全て自主夜間中学から出発している。2西和自主夜間中学は今すぐの公立化は目指していない。3自主夜間中学は夜間中学の裾野を広げる。色んな特徴を持った自主夜間中学がいっぱいあっていい。4夜間中学のない都道府県に最低でも一カ所夜間中学校をつくるという国の方針は歓迎はするが、単につくればいいというものではない。生徒さんの実態から学び、生徒さんを大切にする夜間中学は運動抜きには出来得ない。奈夜中協の運動がそれを証明している。と。最後に生徒さんや関係者全員が舞台に上がり、夜間中学はとても大切な場所、との群読をして終わりました。全国の皆さんにどこまで奈良県の思いや西和自主夜間中学の思いを伝えられたかは分かりませんが、発表者として会場の熱気は十分に感じることが出来ました。このような場面に立ち会えたことに感謝の思いでいっぱいです。(山本直子)

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