2022年度 第25回夜中総会報告
総会終了時の集合場面です。フィリピン出身の生徒さんも応援とお手伝いに駆けつけてくれました。
第25回せいわ自主夜間中学の総会が6月9日にリーベル王寺の地域交流センターで開催されました。
■夜中代表挨拶 吉岡泰次郎
西和に夜間中学をつくる会の第25回総会を迎えました。25回目の総会ということは、西和自主夜間中学は、25年目の活動に入るということです。今までそして現在もずっと、この西和自主夜間中学に出席してくれた生徒の皆さんと、指導にあたられたスタッフの皆さんの熱意と努力と頑張りに、心から敬意を表します。熱心に学ぶ生徒の皆さんと、ボランティアで工夫しながら指導にあたられ、生徒が大好きなスタッフの皆さんが、いなければ、この夜間中学は、続かなかったと考えます。
西和自主夜間中学は、さまざまな事情で学齢期に義務教育を受けることが出来なかったみなさんが、学びを取り戻す場として開校し運営されてきました。日本定住を目指し海外から働きに来た方々、日本での生活を目指す方々、勉強の機会がなかった方々が、生きていくために必要な日本語教育などを、自由に受けることのできる環境を保証することを、その目的とします。しかし新型コロナウイルス感染防止のため、西和自主夜間中学では昨年度は2回、長期の臨時休校を行いました。休校が終わっても火曜日だけの勉強にしました。総会も書面総会でした。学期末のパーティや行事も開催しませんでした。それでもスタッフの皆さんや事務局は、休校中でも生徒の皆さんと連絡を取り、生徒の皆さんの状況を把握し相談にのろうと努めてきました。西和自主夜間中学は、学習だけではなく生徒の皆さんとの日常の生活の相談の場でもあるのです。休校あけの今年の4月の新学期に入り学校を開いたときには、出席してくださった生徒は少なかった。それでも次第に出席してくれる生徒数は増加しています。
最近の西和自主夜間中学は、昼間の保育所や小学校、中学校、高等学校に通う学齢期の外国にルーツを持つお子さん達も、お父さんやお母さんと一緒に来てくれて、楽しく勉強や遊戯などをして、熱気にあふれています。更に専門的な日本語教育の研鑽を積まれた若いボランティアの先生方も加わって下さり、新しい息吹を感じます。私たちの活動内容も、西和自主夜間中学ニュースで多くの方々に紹介できるようになり、昨年度は2回発行し、活動が分かりやすいと好評を得ています。
私達は、通ってくださる生徒と先生の健康が、つながりが、夢や学ぶ楽しさが、これ以上、コロナ禍等によって破壊されてしまうのを全力で防がなければならないと思います。そして西和自主夜間中学の継続的な存続を何よりも優先したいと考えます。そのために、さらに新しい学習様式を、私たちの西和自主夜間中学が獲得していけるように、どうぞ皆さまの知恵をお貸しください。私たちは、競争で人を押しのけることではなくて、出席される、おひとりおひとりの個性や事情を大切にして、自信や夢が育まれる機会になることを目指しています。誰一人も置き去りにしない教育を求めて、マンツーマンの教育を続けています。
出席してくださる生徒の皆さんを、教え導く存在としてではなく、現在の社会の中で共に生き、お互いに楽しさも悲しさも辛さも悔しさも持つ、対等の人間として、コミュニケーションをすることが基本です。弱い立場の人々の教育が大切にされなければ、弱い立場の人々が自己実現できなければ、明日の社会に希望は持てなくなるでしょう。どうか、これからも、この西和自主夜間中学が、皆様方の参加と熱意を戴きながら、楽しく学び続けることのできる場でありますようにと祈念して、挨拶とさせていただきます。
■第25回総会は対面総会として実施しました!
2022年6月9日(木曜日)、「西和に夜間中学をつくる会」第25回総会を王寺町地域交流センターにて開催しました。第23回、第24回総会ともコロナ禍のため書面総会としていたので、ようやく念願叶っての対面総会として実施しました。安全のため、広く生徒さんや支援者の皆様にお声掛けせず、会員だけのきわめて内々の総会と致しました。第1部総会議事は賀須井事務局員の進行で進めていただき、全ての議案は承認されました。特筆すべきは、本年度「西和に夜間中学をつくる会」のホームページの立ち上げ案件が提案、承認されたことです。ただ今、事務局を中心に鋭意準備中です。公開を楽しみにしていて下さい。
第2部は、私たちの力強いお仲間として3団体からの連帯のご挨拶をいただきました。始めに、奈良県教育委員会事務局人権・地域教育課、課長大橋淳様から、丁寧で暖かなご挨拶をいただきました。次に、春日夜間中学の卒業生の西畑保様がご多忙の中駆けつけて下さいました。ご自身の生きざまが落語として披露されることになったとのお話しをしていただきました。(7月16日土曜日、14時、福島県三春町三春交流館まほらにて公演。笑福亭てっぺい落語会)
最後に、とちぎ自主夜間中学を宇都宮市にて2021年8月から開校されている「とちぎに夜間中学をつくり育てる会」代表の田巻松雄さんからお話しを伺いました。国立大学法人宇都宮大学国際学部の教員(当時)であったご自身がどうして自主夜間中学にかかわることになったのか等のお話しでした。田巻松雄さんのアクティブな活動の報告に一同聴きいってしまいました。田巻松雄さんとのご縁は、田巻さんが自主夜間中学を大学での研究テーマにされていたことから、2021年にアンケートにお答えしたことがきっかけです。奈良県の自主夜間中学の事情を知りたいとのことで連絡を取るようになりました。その後、事務局から「西和自主夜間中学の継続的な存続をしていく特別アピール「夜間中学は社会を写す鏡 私たちはいつでも“ただいま勉強中!”です」を提案し了承されました。締めくくりは、参加者全員一言づつの自己紹介で、予定していた1時間を充実した時間として使い切り、お開きと致しました。私は、生徒さんとの出会い、心許せる皆様との出会いに感謝し、25年を共に活動してきたことを本当に幸せに感じています。困難な道程はこれからも続くと思いますが、私たちは、いつでも「ただいま勉強中。」です。 山本直子
「西和に夜間中学をつくる会 第25回総会」に出席して
とちぎに夜間中学をつくり育てる会
代表 田巻 松雄
2022年6月9日夜間に開催された「西和に夜間中学をつくる会 第25回総会」に出席させていただきました。御礼と感想を簡潔に述べたいと思います。
私は、この3月に宇都宮大学国際学部を定年退職した者です。2021年3月に代表として「とちぎに夜間中学をつくり育てる会」を発足させました。会を発足させた直接の目的は、栃木県に自主夜間中学を開設することでした。栃木県には公立夜間中学も多様な学習者を受け入れる自主夜間中学もありません。5年ほど前にいろいろなきっかけがあって夜間中学に関心を持つようになり、栃木県に是非自主夜間中学をつくりたいと思うようになりました。
今から振り返れば「勢い」という言葉が一番相応しいと思いますが、「つくり育てる会」を発足してからは何よりも「勢い」を重視して準備を進め、8月に「とちぎ自主夜間中学」を開校しました。コロナ禍の影響でスタートが遅れ、途中2か月程休校を余儀なくされましたが、「前を向いて歩こう」(暫定的な校歌のタイトル)の精神で、原則、毎週日曜日夜間に学習活動を行っています。
さて、総会に参加させていただいた理由は主に2つです。1つは、奈良の夜間中学に関心を持ったためです。奈良県の夜間中学に関しては「うどん学校」に関する書物を読んだ程度でしたが、昨年秋に実施した全国の自主夜間中学アンケート調査の結果を整理するなかで、奈良の公立夜間中学にも自主夜間中学にも強い関心を持つようになりました。公立夜間中学と自主夜間中学がそれぞれ3つあること、この6つの夜間中学を支える運動団体が6つあること、そして、6つの夜間中学と6つの運動団体で奈良県夜間中学連絡協議会をつくっていること、このような夜間中学の広がりとつながりは奈良県にしかないものと思います。もっともっと早く奈良の夜間中学に関心を持つべきだったと思いますが、挽回するべく今後奈良の夜間中学から多くのことを学びたいと思っています。もう1つの理由は、「つくり育てる会」の総会を控え、総会の在り方や進め方について参考にしたいと思っていました。
総会では、最初に吉泰次郎代表が「西和に夜間中学を作る会第25回総会での挨拶案」を語られました。静かな口調での語りに、25年目を区切りとして、今後も楽しく学び続けることのできる場を守り抜いていく強い決意が伝わってきました。加えて、Equality(平等)とEquity(公正)という言葉を比較しながら、自主夜間中学は、学習者の状況や特性を尊重した学びの個別化を重視すること、誰一人も置き去りにしない教育を求めて、マンツーマンのEquityの教育を目指すものだという語りが特に印象的でした。
また、西和自主夜間中学の継続的な存続をしていく特別アピール「夜間中学は社会を写す鏡」も報告されました。ウクライナ情勢を「私たち自身が様々な外国にルーツをもつ人びとを支援するとはどういうことなのか、改めて考えさせられることになりました」と自分たち自身の課題として受け止め、「教室でいつでも、ただ今、勉強中!」の精神で一緒に考えて行こうとのメッセージをしっかりと受け止めたいと思います。
「とちぎ自主夜間中学」はまだ1歳になっていません。「25」という数字の想像出来ない重さを感じつつ総会の進行を見守っていました。総会が淡々と進むなかで、何よりも、お互いを尊重する信頼関係のようなものが共有されていると感じました。25年の歩みのなかでは様々な困難、苦労あるいは対立などがあったと思いますが、何よりも生徒が大好きで熱意と努力で頑張ってこられたスタッフの皆さんと熱心に学ぶ生徒の皆さんが一緒になって作り上げてきた西和ならではの世界なのだと思います。
総会では、「つくり育てる会」を紹介する時間まで頂き、誠に有難うございました。
西和の25年を含む奈良の夜間中学の歴史を益々知りたくなりました。今後、研究面でもご協力をお願いすることがあるかと思います。また、1歳にもなっていない「とちぎに夜間中学をつくり育てる会」と「とちぎ自主夜間中学」ですが、是非、今後交流をお願い出来ればと思います。
最後になりましたが、アンケート調査結果およびその後の聞き取りに対して丁寧にご対応いただくとともに、総会への出席の機会を与えて頂いた山本直子事務局長に厚く御礼申し上げます。皆さん、今後ともよろしくお願いいたします!!